
家の売却で注意すべき税金と特例|3,000万円控除・所有期間・相続空き家を解説
家の売却時に気をつけなければいけない税制は?
家を売却したときの税金は、売却価格そのものではなく、原則として売却によって生じた利益 「譲渡所得」に対してかかります。ただし、所有期間や居住状況、買換えの有無によって税率や 利用できる特例が変わるため、売却契約を結ぶ前の確認が重要です。
①購入時の契約書や領収書が残っているか、②売却する年の1月1日時点で所有期間が何年か、 ③3,000万円特別控除と新居の住宅ローン控除のどちらを利用するか、です。
1.税金は「売却代金」ではなく「売却益」にかかる
土地や建物を売却した場合の譲渡所得は、次の式で計算します。 住宅ローンの残債額は、譲渡所得の計算上、直接差し引く項目ではありません。
取得費に含まれる主なもの
土地・建物の購入代金、購入時の仲介手数料、登記費用の一部、造成費や改良費などです。 ただし、建物部分は所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算するため、 購入価格をそのまま取得費にできるわけではありません。
譲渡費用に含まれる主なもの
売却時の仲介手数料、売買契約書の印紙代、売却のために必要となった測量費、 建物を取り壊して土地を売る場合の解体費用などが該当します。 一方、通常の修繕費や固定資産税などの維持管理費は、原則として譲渡費用にはなりません。
取得費が分からない場合、売却代金の5%を概算取得費として計算できます。 しかし、実際の購入価格より大幅に低い取得費となり、課税される利益が大きくなる可能性があります。 売買契約書、領収書、建築請負契約書、増改築資料、通帳記録などは、売却前にできるだけ探してください。
2.所有期間5年を境に税率が大きく変わる
所有期間は、売却日ではなく「売却した年の1月1日現在」で判定します。 2026年中に売却する場合、原則として2020年12月31日以前に取得した不動産は長期譲渡所得、 2021年1月1日以後に取得した不動産は短期譲渡所得になります。
| 区分 | 判定 | 税率の目安 |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 売却年1月1日時点で5年以下 | 所得税30%+復興特別所得税+住民税9% 実質約39.63% |
| 長期譲渡所得 | 売却年1月1日時点で5年超 | 所得税15%+復興特別所得税+住民税5% 実質約20.315% |
| 10年超のマイホーム | 一定の居住用財産 | 3,000万円控除後の6,000万円以下の部分は軽減税率の対象となる場合あり |
数か月待つことで長期譲渡所得になると思っていても、1月1日時点の判定ではまだ5年以下となる場合があります。 売却時期を調整できる場合は、契約前に取得日と税率区分を確認しましょう。
3.マイホームの3,000万円特別控除
自分が住んでいる家、または以前住んでいた家を一定期間内に売却した場合、 所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度があります。 売却益が3,000万円以内であれば、結果として譲渡所得税が生じないこともあります。
特に注意したい適用条件
- 以前住んでいた家は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する
- 親子、夫婦、生計を一にする親族など、特別な関係のある人への売却ではない
- 売却年の前年・前々年に同じ特例や一定の譲渡損失特例を利用していない
- 一時的な仮住まい、別荘、特例利用だけを目的に入居した家ではない
- 税額がゼロになる場合でも、必要書類を添付して確定申告を行う
原則として、解体日から1年以内に売買契約を締結し、転居後の期限内に売却する必要があります。 また、解体後から契約までの間に貸駐車場などとして使用すると、特例を受けられない可能性があります。 解体前に売却方法を決めることが重要です。
4.3,000万円控除と新居の住宅ローン控除
旧宅の売却で3,000万円特別控除や軽減税率の特例を利用すると、 新居について住宅ローン控除を受けられなくなる期間があります。 新居の入居年、その前2年、さらに入居後の一定期間に旧宅の譲渡特例を利用する場合は、 併用制限の確認が必要です。
5.所有期間10年超なら軽減税率を確認
売却した年の1月1日時点で、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えるなど一定の要件を満たす場合、 3,000万円特別控除を適用した後の課税譲渡所得について軽減税率を利用できることがあります。 3,000万円特別控除と軽減税率は、要件を満たせば重ねて利用できます。
6.相続した家を売る場合の税制
相続した不動産の取得費と所有期間は、原則として被相続人の取得費と取得時期を引き継ぎます。 相続時の評価額が、そのまま売却時の取得費になるわけではありません。
相続空き家の3,000万円特別控除
被相続人が一人で住んでいた一定の旧耐震住宅などを相続し、期限内に売却する場合、 譲渡所得から最高3,000万円を控除できる可能性があります。 2024年1月1日以後の売却で、対象物件を取得した相続人が3人以上の場合は、 各相続人の控除上限が2,000万円となります。
主な要件には、1981年5月31日以前の建築、区分所有建物ではないこと、 相続開始から売却まで賃貸・事業・居住に使用していないこと、 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること、 売却代金が1億円以下であることなどがあります。
相続税の取得費加算
相続税を納めた人が、相続した不動産を一定期間内に売却した場合、 納付した相続税の一部を取得費に加算できる制度があります。 ただし、相続空き家の3,000万円特別控除とは原則として同じ物件について併用できないため、 どちらが有利かを比較する必要があります。
7.売却損が出ても、給与所得と自由に相殺できるとは限らない
土地・建物の売却で損失が出ても、原則として給与所得や事業所得から自由に差し引くことはできません。 ただし、所有期間5年超のマイホームで住宅ローンが残っている場合や、 一定の買換えを行う場合には、要件を満たせば損益通算と最長3年間の繰越控除を利用できる可能性があります。 2026年度税制改正により、これらの適用期限は2027年12月31日まで延長されています。
8.売却前に準備したい書類
- 購入時の売買契約書・建築請負契約書
- 購入時と売却時の仲介手数料の領収書
- 登記費用、造成費、改良費、増改築費の資料
- 売却のために支払った測量費・解体費・印紙代の領収書
- 転居日が分かる住民票、戸籍の附票など
- 相続税申告書、遺産分割協議書、被相続人の購入資料
- 住宅ローン残高証明書と新居の借入条件
まとめ|売却価格を決める前に税金を試算する
家の売却では、査定価格が高いか低いかだけでなく、 売却後に残る手取り額を確認することが重要です。 特に、取得費が不明な物件、所有期間が5年前後の物件、住み替えを伴う売却、 相続した空き家は、契約時期や売却方法によって税負担が変わる可能性があります。
不動産会社は売却価格や諸費用の整理を行えますが、個別の税額判断や税務代理は税理士の業務です。 売却益が大きい場合や複数の特例が関係する場合は、不動産会社と税理士の双方へ事前に相談することをおすすめします。
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国税庁「土地や建物を売ったとき」「マイホームを売ったときの特例」 「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」「取得費が分からないとき」 「譲渡費用となるもの」「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」、令和8年度税制改正資料。
※本記事は2026年7月18日時点の一般的な制度説明です。個別の適用可否・税額は税務署または税理士へご確認ください。
